vol.7

提携医療機関のご紹介

医療法人 篠原湘南クリニック クローバーホスピタル

自宅で診療を受ける 「往診」は昔からあるもの

在宅医療サービスの一つ、「訪問診療」は、まだ一般用語ではないようです。しかし、患者さんの元へ医師が訪問して行う医療行為のことで、昔からある往診とほぼ同じです。異なる点は、契約の上、診療計画に基づいた定期的な訪問であるところ。急に具合が悪くなったときにも緊急往診を受けられます。(※訪問診療の受療は、通院困難が要件)

「患者さん、ご家族に訪問診療の説明をする際は、計画的な往診と表現しています。往診なら伝わるから」と篠原裕希医師。訪問診療の存在意義を2つ挙げられました。

「まずは通院困難な患者さんを守ること。そして、状態悪化時に緊急往診、入院も含めた対応を医師自身が行う。これが在宅医療の肝。すなわち安心の担保です」(篠原医師)。救急車では病院を指定できません。往診の医師が入院先も手配してくれるのは、ありがたいことです。

篠原医師は、医療法人 篠原湘南クリニックの理事長で、ベッド数19床の診療所を開設した1988年以来、藤沢市の地域医療に貢献してきました。往診に本格的に取り組むきっかけとなったのは、入院患者さんの身の回りの世話をする付添看護制度の廃止でした。入院病床の維持が難しくなり、入院患者さんの半分に転院をお願いし、半分は自宅へ帰し定期的な往診で対応としました。

「自宅へ戻っていただいた患者さんの往診は、診療所の昼休みの3時間くらいの間に行いました。さらに、24時間365日オンコール体制で、当時は風呂にもおちおち入れず、藤沢市から一歩も外へ出られませんでしたね」(篠原医師)。

“入院のできる在宅医療” “医療のある介護”の実践

往診をする中、見えてきたことがありました。家へ安心して戻れる治療をするには、医療だけではなく、介護の視点も必要。そこから、可能な限り住み慣れた地域で生活が継続できるよう、退院後の回復期から在宅復帰を目標にした医療・介護・在宅医療の連携をめざしました。診療所内に地域初となるデイケアセンター(通所リハビリ)を併設し、介護保険法施行となった2000年には訪問看護ステーションとケアプランを作成する居宅介護支援事業所を開設。2004年には一般外来・入院病床・訪問診療のあるクローバーホスピタルを開設しました。24時間365日の在宅診療システムとその受け皿の整備という国の制度が創設されたのは、2006年のこと。篠原医師にやっと国の制度が追い付いたのでした。

人の心を動かすのは熱意

医療・介護制度の流れと地域のニーズから今後の展望を的確に描き、地域のために尽力してきた篠原医師には、感銘を受けた恩師、仲間がたくさんいました。礼節に厳しかった中学教師、離島医療の担い手をめざした同級生、産科から外科へ進む道を変えることになった心の熱い講師、寝る間も惜しみ勉強に打ち込む同期らから熱意を感じ、受けた影響は計り知れません。

「熱意はまわりに伝わるもの。熱意を持って話すことで小さな理解につながり、共感が物事を動かす大きなうねりになることもある」と熱く語る篠原医師の姿は、常に現場にあります。ベッド数165床の病院、介護福祉施設もあるクリニックグループの理事長室の椅子が、温まるときはありません。