vol.5

特集企画

シニア向け施設の種類とその選び方

近年、シニア向け施設の種類は多様化し、2011年には「サービス付き高齢者向け住宅」が加わりました。サービス提供方法や契約形態の異なる住まいが供給され、選択肢が増える反面、差異が分かりにくいといった 課題が生じています。ここでは、主なシニア向け施設の種類と特徴などをご紹介いたします。

住宅系、施設系とは?

高齢者向けの住まいと言っても多くの種類がありますが、「住宅系」と「施設系」に大別されます。

〈住宅系〉サービス付き高齢者向け住宅

安否確認や生活相談等、高齢者の安心を支えるサービスを提供するバリアフリー構造の住宅。

生活支援サービス あり
介護保険サービス 外部のサービスを利用、又は特定施設
入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)の場合スタッフにより提供。
契約形態 建物賃貸借契約・生活支援サービス契約
前払金 敷金

〈施設系〉軽費老人ホーム(ケアハウス)

本人の収入に応じて低額な費用で基本的な生活支援サービスを受けながら、自立した生活を送ることができる住まい。

生活支援サービス あり
介護保険サービス 外部のサービスを利用、又は特定施設 入居者介護の場合スタッフにより提供。
契約形態 施設入所(居)し、サービスの提供を受けるための契約を締結
前払金 0〜数百万円

〈施設系〉介護付有料老人ホーム

介護保険法に基づき特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホーム。

生活支援サービス あり
介護保険サービス 施設スタッフによりサービス提供
契約形態 利用権契約(※)が中心
前払金 0円から1億円を超えるものまで幅広い

〈施設系〉住宅型有料老人ホーム

食事等の生活支援サービスが付いた有料老人ホーム。介護は別契約で外部の介護サービスを利用する。

生活支援サービス あり
介護保険サービス 外部のサービスを利用
契約形態 利用権契約(※)が中心
前払金 0円から1億円を超えるものまで幅広い

〈施設系〉特別養護老人ホーム

要介護3以上が対象の介護保険施設。生活支援・介護サービスが提供される。

生活支援サービス あり
介護保険サービス 施設スタッフによりサービス提供
契約形態 施設入所(居)し、サービスの提供を受けるための契約を締結
前払金 不要

〈施設系〉老人保健施設

要介護1以上が対象の介護保険施設。病院と自宅の中間施設的位置付け。介護、看護、リハビリが受けられる。

生活支援サービス あり
介護保険サービス 施設スタッフによりサービス提供
契約形態 施設入所(居)し、サービスの提供を受けるための契約を締結
前払金 不要

〈施設系〉認知症高齢者グループホーム

要介護1(一部要支援2)以上の認知症の方が対象。9人1単位で家族的な共同生活を送る住まい。

生活支援サービス あり
介護保険サービス 施設スタッフによりサービス提供
契約形態 施設入所(居)し、サービスの提供を受けるための契約を締結
前払金 ホームによる

出典/「あんしんなっとく高齢者向け住宅の選び方」(東京都福祉保健局)
※居室、共同設備等を利用する権利を得る契約であり、サービスと住まいの利用契約が一体となっているもの。
・住宅・施設により提供される生活支援サービスの内容は異なりますので、必ず個別に確認してください。
・記載の費用は地域や事業者により異なります(目安としてご覧ください)。

次に、住宅系に分類されるものと、施設系に分類されるものの違いについて見てみましょう。下記をご覧ください。

住宅系

  • 住宅系の基本は “居住スペース” の提供であり、高齢者に向けた各種サービスは上乗せ(別契約)となります。ただし、サービス付き高齢者向け住宅は、基本サービスとして状況把握(安否確認)、生活相談サービスが(東京都内では、これに加え緊急時対応も)必ず提供されます。
  • 住宅により提供されるサービスは異なり、自己責任のもと自由に選択することになります。
  • 要介護度が重度化した時等は、再度住み替えは必要となります。
  • 入居時に高額な前払金が不要な場合が多いので、住み替えが比較的容易です。

施設系

  • 施設系は、住居と生活における様々なサービスが一体化して提供されます。介護保険法により指定された施設については、職員数などの基準があります。
  • 要介護度が重度化した時等は、居室を移動する場合もあります。

住宅系は、それぞれの居室にキッチン、バス、トイレなどの設備が備わっており、プライバシーも概ね守られており、共用部としては、希望に合わせて利用できる食堂などを備えているものが多くなっています。これに対し、施設系の居室は、広さが16〜18㎡で簡易な洗面とトイレだけが付いているケースが多く、食事やお風呂は、共用のものを決められた時間に利用するようになります。大まかに言いますと住宅系は、食事や外出など出来るだけ普段通りの生活を送りながら、必要なケアサービスが受けられる「住まい」に対し、施設系は生活全体を管理されながら食事や介護サービスを受けるための「施設」と言えるでしょう。

「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と
「有料老人ホーム」の違い

高齢者向けの住まいの中には、公的な施設と民間企業が提供する施設があります。公的な施設の代表と言えば「特別養護老人ホーム(特養)」があげられます。特養は、利用料が安価で、利用者にとっては大変魅力的な施設と言えるでしょう。しかしながら、税負担が重いため新たな整備はほとんどなく、各施設ともかなりの入居待ち状態になっており、入居できれば運がいいと思っていいでしょう。同じようなことが公的施設全般に言えます。

今後も公的施設が期待されない状況の中で、民間による整備が進んできているのが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と「有料老人ホーム」です。では、その違いについて見てみましょう。

サービス付き高齢者向け住宅 有料老人ホーム
登録制度であるため、 全ての住宅が一定基準をクリア 届出制度であるため、基準を満たしていないホームも存在
一般的に月払い方式(※1)であるため、居住期間と費用負担の関係性が分かりやすい 一般的に前払い方式(※2)で、入居契約の際に費用の根拠や退去時の返還額について十分な理解が必要
プライバシー重視 共同生活重視
自立的・自律的な暮らし 協調的な暮らし
自由ではあるが自己責任 管理的ではあるが安心
地域資源を活用しながら暮らす 施設の中で生活が完結しがち
主として建物賃貸借契約 主として利用権契約
原則として借地借家法により、契約した住戸での 継続居住が保証される 介護度が重度化した場合の介護専用居室等への 移動など、居室の移動があり得る
行政による立ち入り調査権あり(行政・福祉行政が窓口) 行政による立ち入り調査権あり(福祉行政が窓口)

※1 月払い方式 : 一般の賃貸住宅と同様に、毎月家賃及び サービス費を支払う方式。 ※2 前払い方式 : 入居時に将来発生することが見込まれる 家賃等をまとめて支払う方式。

よく、「サ高住」と「有料老人ホーム」の違いについて質問を受けますが、明快に答えることが難しいのが現状です。それは、高齢者の方のニーズに応えるためにいずれにも実に様々な商品があるからです。あえて説明するならば上記のようになります。いずれを選択する場合にも、サービスや費用負担について納得いくまで説明を受けることが何より重要です。説明担当者が、曖昧であったり、分かりにくいようであれば、その住まいは選択肢から外した方がよいでしょう。いろいろ比較検討し、ご自身に最適な住まいを見つけてください。